バーチャルマーケット5を終えて(中編)

前回投稿したバーチャルマーケット5を終えて(前編)の続きです。

前回、「そんなこんなで半年くらいかけて「竜装の姫騎士メギドナ」が完成します!」と、あまりにも過程を飛ばしすぎたのでちょっとだけ補足。
Twitterのスレッドには必殺技を考えた工程が全く書かれていなかったので、そこを解説します。

メギドナの甲冑のデザインはドラゴンの姿の見立てです。
ドラゴンといえば、外見的に目立つ特徴は角、牙、翼、鱗……といったところなので、それらを鎧のデザインに盛り込んでいったのですが、
その中でも特に目立つ「翼」は強調しようと思いました。

コンセプトの一つに「邪気眼」があったので、翼のデザインで邪気眼を表現しようと思いました。
邪気眼つまり闇の力、闇の力といえば魔剣…… 邪悪な竜の力を得た魔剣…… を背中に展開して、翼の見立てにしよう!
もちろん背中に魔剣を浮かせるなら、それを戦うときにも使うべきでしょう。

こうして翼のデザインと必殺技の方針が一気に決まりました。
必殺技は「複数の魔剣を矢のように飛ばして攻撃」、これです!

必殺技を放つ理由、それは敵を殺すためです。
敵とは誰か? メギドナが使うのは「邪悪な竜の力」。邪悪とは誰にとって……? もちろん人間にとって、です。
つまり竜は人間の天敵だったのです。
そうか、メギドナは敵の力を利用して戦っていたのか! 知らなかった……

あっ、まぶたを閉じたらメギドナが見えてきた…… 君はそこにいるのか……?
メギドナ、もっと君のことを教えてほしい。どうやって竜の力を魔剣に封じ込めたの?
なるほど、魔剣を作るときに焼入れ工程で水の代わりに竜の血を使うんだね。そうすると剣に竜の力が加わると。

メギドナ、なんで魔剣が宙に浮くの?
なるほど、竜はその巨体を翼の羽ばたきだけで宙に浮かせているわけではない。魔力によって体重を支えているんだね。
そして竜の血には潤沢な魔力が溶け込んでいて、血を焼入れに使った程度でも剣を浮かせる浮力があるんだね。

メギドナ、魔剣自体が魔力を持ってるのと、君がその力を自由に行使できるのとは話が別じゃない?
なるほど、自分自身も竜の血を飲んで魔力を得ているんだね。そして自分が飲んだ血と同じ竜が流した血によって作られた魔剣は、ID認証が通って自由に操ることができるんだね。

そうして描かれたのがコンセプトアート「悪竜戦争」です。
この絵は、浮遊する魔剣による攻撃で地面に叩き落とした竜の、その翼を剣で地面に縫い止めて動けなくさせ、止めの一撃を放つシーンです。

この戦法はメギドナが教えてくれました!
空を飛ぶ竜を仕留めるには、まず動きを止めること。剣に過剰な圧力を加えて破裂させ、驚かせて動きを止める技がある。
動きを止めた竜の上空から剣を降らせて地面に叩き落とす技がある。
叩き落とした竜の反撃から身を守る技がある。
そして止めを刺すために、残りの魔剣を全弾撃ち尽くす技があるそうです。

メギドナはそれらを「悍ましき角」「嘆きの牙」「賢しらなる鱗」「忌まわしの爪」と呼ぶそうです。
彼女には祖国の城壁を爪で壊され、民草を角や牙で殺され、反撃しようにも硬い鱗に阻まれたという苦い記憶がある。
自分自身が竜の力を得た今、それらの記憶を糧として竜と戦うために、あえてトラウマとなったシーンを思い起こす名前を、魔法に命名しているそうです。
なるほど~

でもメギドナ、そんな戦い方してたら自分自身も竜の邪悪な力に染まっていきませんか?
なるほど、理性を保つために、右手にその聖剣を持っているんだ。
聖剣には特別な力は何もないけど、悪竜戦争以前の王家の治世に作られたもので、それを見るたびに人としての生き方を思い出し、邪悪に染まらずに済んでいるんだね。

なるほど~

いたく感動した私は、今回のVket5で、そんな彼女の勇姿を広めたいと思いました。
今回出店することになった場所は「祝祭のマルシェ」……
一時期は滅びかけたけどいろいろあって今ではすっかり平和になった世界のようです。メギドナの時空と似てますね。

「祝祭のマルシェ」は祭典が開催されている世界なので、ブースは「祭典の出し物」ということになります。
つまり普段はそこにはないけど、催しの間だけ一時的にそこに置かれるのが、私達の作るブースです。
つまり景観に溶け込まず、主張が激しく作り物らしいブースであって良いのです。

まずメギドナは国が滅んだとはいえかつては王族なので、王家を表す記号を入れます。
城の内装、特に玉座の間のイメージ。大理石の内装に、レッドカーペットです。

VRChatの日本人ユーザーは低身長のかわいいアバターを使いがちなので、その平均身長は120cmくらいとも言われます。
なので低身長の目線で見やすいブースにすることが基本ですが、そうなると高身長のユーザーに足元のデザインを見せつけることができません。足元はわりとデザインにこだわった部位だし、かっこいい寄りのメギドナのデザインを好む人は高身長アバターを使っている可能性も高いことが予想できるので、そういった来場者にも足元を見せたかったのです。
そこでメギドナのすぐ前に1mほどの階段を作り、床面を底上げしました。これで、ブースの外から中に入る際、足元から上半身に目線を移動させ、アバター全体を見てもらうための自然な流れができます。
また、さらによく観察したい場合、背の高いアバターは階段の下で、背の低いアバターは階段の上で、屈まなくても位置移動により見やすいポジションで3Dモデルを鑑賞することができます。

Vketにはブース寸法の規定があります。幅4m × 奥行き4m × 高さ5m 以内という規定です。
単純に考えてブースは大きいほど目立つので、規定サイズのギリギリまで活用します。
今回は上空スペースが余り気味となったので、屋根を作りました。
屋根があると暗くなるので、明かり取りのためにガラス窓を嵌めました。ガラス窓の形はスクラマヘッド(私のアイコン)です。
厚い屋根の重さを支えるために柱や壁を追加しようか迷いましたが、ブース内が見づらくなるのでやめました。
バーチャル建築の都合のいいところだけ活用していきます!

次にメギドナの3Dモデルを配置します。
まず王族ということを「堂々としている」ポーズで表現します。左右対称で重心が安定したポーズであるべきです。
そして背中の魔剣や右手の聖剣が目立つポーズが良いでしょう。魔剣は翼状に大きく広げて見せ、剣は体の前に配置します。

メギドナは強い。強さにはいろいろありますが、彼女の強さは「手段を選ばない」強さです。
ここではメギドナのキャラの方向性を記号的に表現するため、
「手段を選ばない戦い方の、ポーズが特徴的な既存キャラ」の印象を、パクって利用します。
手段を選ばない戦い方のキャラ、つまり…… 碇ゲンドウです。
碇ゲンドウのポーズをさせるためには手や肘を置く場所が必要です。ここで聖剣を使います。
聖剣を地面に突き刺したとき、柄頭に手を当てると手の位置が碇ゲンドウの如く口元に来るように、剣の長さを調節します。
またこのとき鍔の位置が全体に対してバランス良く見えるようにします。

コンセプトアートでは聖剣の長さがはっきりと描かれていません。
メギドナに聞いてみたのですが、私が描いたアートはメギドナの死後に彼女の世界の画家が描いたものと酷似しているそうです。
そしてその絵は彼女の姿を記録した絵として一番有名なものらしいのですが、聖剣が隠れているのでその正確な長さや形状は後世に伝わっていないそうです。

「碇ゲンドウポーズをさせる都合で聖剣の長さを変える」という行為に疑問を感じるところもあったことですし、
歴史的な経緯も踏まえた上で、聖剣にはブレンドシェイプで長さや形状を自由に変えられる仕様を追加して、その形状は利用者に委ねることにしました。
こうして聖剣のデフォルト仕様は、「幅広の刀身を持つ大剣」。しかし両手剣ほどは柄が長くなく、片手でも両手でも運用することもできる柄の長さを持つ「片手半剣(ハンド・アンド・ハーフソード)」ということになりました。

そして奥側の壁にコンセプトアートを嵌め込みます。
宗教画的な構図で描かれたこの絵は、目の前の3Dキャラクターが歴史上の人物であるということを示す記号として機能します。

立て看板を配置します。大理石のブースに対して、あえて現代的な鉄パイプのフレームで作られた立て看板です。
これは城などの歴史的建造物の内部が博物館化されている際、展示物の解説に使われる看板のイメージです。
誰も最後まで読まないであろうクソ長い解説文は、真面目に読ませるためではなく「博物館の展示の解説らしさ」の表現として機能します。
左右対称の配置にしたいので、左には歴史的経緯の解説、右にはアバター商品としての説明を書きます。

Vket5では日英2ヶ国語対応が公式から推奨されており、スイッチによって言語を切り替えるシステムも配布されていたので、英訳も用意しました。

Vketにはペデスタルアバター規定があり、展示できる髪やスカートなどの揺れものやマテリアル数などが制限されます。
メギドナのフルバージョンでは魔法4種類に含まれるマテリアル数が多いので、技を1種類だけ使えるサンプルアバターを4種類用意しました。
さらにパッと見で違いがわかるように、見た目のカラーも4種類用意します。

デフォルトカラーは臙脂色ドレス銀鎧の「亡国の姫君」。これには一番派手でインパクトのある魔法「悍ましき角」を持たせます。
青ドレス銀鎧の「青の聖騎士」には「嘆きの牙」を。
白ドレス銅鎧の「神話の英雄」には「忌まわしの爪」を。
黒ドレス赤鎧の「帝国の女騎士」には「賢しらなる鱗」を。
それぞれ持たせます。
販売するカラースキンは全部で7種類ありましたが、その中でも派手で個性がかぶらない4種を選びました。
なお「神話の英雄」はコンセプトアートと同じ初期案…… もとい、メギドナの世界での宗教画に描かれた歴史上のメギドナの衣装の色、という設定です。

そうして完成したのが例のブースです!
ここで写真貼ろうと思ったけど、ブースを真正面から撮った写真が1枚もない! 前回記事の動画を見てください。

またまた長くなったので今回はここまで。次回の記事でイベント開催後の話をします。
(続く)

(追記:続かない。飽きたしくだらない話になったのでここで終わり)

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書いてる人:州倉正和